何かは引っかかっているのに、「悲しい」では違うし、「腹が立つ」と言い切るのも違う。そんなとき、気持ちにぴったりの名前を見つけてから書こうとすると、最初の一行で止まってしまいます。

言葉が決まらない日は、気持ちの名前をいったん空欄にして、起きたことから書いてみてください。「何があったか」「そのあと自分が何をしたか」「今はどうしたいか」は、別々の短い文で残せます。これは日常のメモや日記のための書き方です。気持ちを必ず整理したり、原因を突き止めたりする必要はありません。

出来事を、見聞きした範囲で一文にする

最初は、相手の考えや自分への評価を入れずに書きます。たとえば「友人に軽く扱われた」ではなく、「週末の約束が、前日に変更になった」。自分が見聞きした部分を取り出すための書き換えです。最初に浮かんだ言葉を消さなくても、その下にもう一行書けばかまいません。

「軽く扱われた気がした」という受け止め方も、残してよいものです。ただ、出来事の文と分けると、あとから「実際に起きたこと」と「そのとき自分が感じたこと」を区別して読めます。

  • 出来事:「約束が前日に変更になった。」
  • 受け止め:「自分との予定は後回しなのかな、と思った。」

相手の理由がわからないなら、わからないままにします。空欄を埋めるために、相手の本心を決めなくて大丈夫です。

気持ちの代わりに、そのあとの動作を書く

出来事の次に、「画面を閉じた」「すぐ返事ができなかった」「別のことをしながら何度も思い出した」など、自分の動作を残します。動作だけで気持ちを断定はできませんが、そのときの様子を言葉にする入口にはなります。

たとえば「変更の連絡を見て、返信欄に一度書いた文を消した」。ここまで書いても、怒りなのか寂しさなのかを選ばなくてかまいません。「何と返すか決まらなかった」と続ければ、わからなさも含めて記録になります。

気持ちの名前には「かもしれない」をつける

少し書けそうなら、仮の言葉を置いてみます。「寂しかったのかもしれない」「残念に近い。でもそれだけではない」。ぴったりでなければ直せる書き方にしておきます。

似た言葉で迷ったら、誰に向いた気持ちか、何を期待していたかを短く補います。「予定がなくなって残念」と「会えるのを楽しみにしていたので寂しい」は、同じ出来事でも残る情報が少し違います。どちらが正しいかを決める作業ではありません。

二つの気持ちが同時にあってもよいのです。「会えなくて寂しい。でも、疲れていたので少し安心した」。後半を書いたからといって、前半がうそになるわけではありません。接続詞を「でも」にするか「それと」にするかも、自分の感覚に合わせて選べます。

四つの欄で書く、途中で止めてもよいメモ

  • 起きたこと:[見たこと・聞いたことを一文]
  • そのあとの自分:[したこと・しなかったこと]
  • 近い言葉:[気持ちの仮の名前/まだわからない]
  • 今の希望:[今したいこと/今日は決めない]

記入例は「約束が変更になった。返信を書いて消した。残念と寂しいの間かもしれない。今日は別の日程を考えず、明日返事をしたい」。この四文で止めてかまいません。希望の欄も、問題の解決策ではなく、今の自分が望む小さなことを書く場所です。

紙に四つの見出しを置いて、埋まる欄だけ使います。出来事だけ書けた日や、「まだわからない」が三つ並ぶ日があっても、書き直す必要はありません。

人に見せる文章にするのは、あとでもよい

自分用のメモは、順番が変でも、同じ言葉が続いても大丈夫です。誰かに伝える場合は、まず「今日は話を聞いてほしい」「返事を急がなくていい」のように、相手に望むことを別の一文で足す方法があります。

気持ちを全部説明するのが難しいなら、「まだうまく言えないけれど、予定が変わって残念だった」まででも伝える文章になります。日記として手元に置くことも、人に読んでもらうことも選べます。書いた直後に、どちらにするか決めなくてかまいません。